歯科技工所ベースアップ支援料とは?
2026年度(令和8年度)診療報酬改定において、新たに「歯科技工所ベースアップ支援料」が新設されました。
本項目は、歯科技工所で働く歯科技工士の賃上げ・処遇改善を目的として導入された評価項目です。
歯科医院が外部歯科技工所へ補綴物等の製作を委託した場合に算定できる点数であり、補綴・義歯・矯正分野など幅広い技工物が対象となります。
歯科技工所ベースアップ支援料の概要
点数:1装置につき15点
さらに、令和9年6月より「30点」に増点予定となっています。
前提:算定するのは「歯科医院」
「歯科技工所ベースアップ支援料」を直接算定・請求するのは、歯科技工所ではなく“歯科医療機関(歯科医院)”です。
歯科医院が地方厚生局へ施設基準を届出し、診療報酬として支援料を算定したうえで
その財源を歯科技工所への委託費増額分として還元する仕組みとなっています。
つまり、本制度は「歯科技工士の賃上げ支援」を目的としつつ実際の請求主体は歯科医院という点が大きな特徴です。
なお「院内技工士による製作・修理」については、本制度の対象外となります。
“外部歯科技工所へ委託していること”が算定の前提条件となります。
歯科技工所ベースアップ支援料の算定要件
歯科技工所ベースアップ支援料は簡潔に述べると
- 施設基準を満たした保険医療機関の歯科医師が交付した歯科技工指示書または歯科医師の指示に基づき
外部歯科技工所へ補綴物等の製作・修理を委託した場合に算定できます。
詳細:令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生省資料)
対象となる補綴物・装置

疑義解釈で示されたポイント
2026年4月21日掲載「疑義解釈資料その4」より
問3
「歯科技工所ベースアップ支援料」の留意事項通知(3)において、「本区分はM005に掲げる装着又はN008に掲げる
装着の算定日に算定する」とされているが、患者が理由なく来院しなくなった場合、患者の意思により治療を中止した
場合又は患者が死亡した場合であって、補綴物等の製作等がすでに行われているにもかかわらず、装着できない場合は
当該支援料は算定できるのか。
(答)未来院請求時に算定して差し支えない。
問4
歯科技工所ベースアップ支援料の施設基準において、「当該支援料を全て歯科技工所への委託費の増額に充てること。」
とあるが、製作技工に要する費用の中に当該支援料を含めて、製作技工に要する費用としてまとめて支払いを行ってよいか。
(答)まとめて支払うことで差し支えない。ただし、当該支援料が含まれることが分かる請求書等を
算定に係る書類として保存すること。
問5
歯科診療所から歯科技工所に対する、当該支援料による委託費の増額に 伴う消費税の増額分について
当該支援料を充当することとして差し支えないか。
(答)差し支えない。
引用元:疑義解釈資料の送付について(その4)(厚生省資料)
2026年5月8日掲載「疑義解釈資料その5」より
問 11 歯科技工所ベースアップ支援料については、1装置につき、装着の算定時に算定する取り扱いであるが
以下の装置における取り扱いはどのようになるのか。
①磁性アタッチメントを支台装置とする有床義歯を装着する際に、キーパー付き根面板と有床義歯に対して
それぞれ装着料を算定した場合
②帯環を含む固定式矯正装置を装着する際に、それぞれ装着料を算定する場合
(答)①キーパー付き根面板と有床義歯(磁石構造体を含む)は別装置であるため、有床義歯とキーパー付き根面板の装着料の
算定時に、歯科技工所ベースアップ支援料はそれぞれ算定できる。
②帯環と固定式矯正装置は同一装置であるため、歯科技工所ベースアップ支援料は1回算定する。
引用元:疑義解釈資料の送付について(その5)(厚生省資料)
歯科技工所➡歯科医院へ協力を依頼する際のポイント
歯科技工所ベースアップ支援料は、実際に算定する主体が「歯科医院」であるため、歯科技工所側からの適切な案内・情報提供が非常に重要になります。
現時点では
- 制度自体を知らない歯科医院
- 算定対象を正しく理解していない医院
- 施設基準届出をしていない医院
も少なくありません。
そのため、“歯科技工所側”からの積極的なアプローチアプローチすることが重要です。
「技工料金を単純に値上げしたい」という説明ではなく
- 国の制度変更
- 診療報酬で評価されるようになった
- 医院負担だけでなく保険算定できる
という形で説明することが重要になります。
本制度をスタートした歯科技工所がするべきこと
今後、厚生局個別指導等でも確認対象となる可能性があるため、書類整備は必須と考えられます。歯科技工所側では以下が重要になります。
- ベースアップ分を含む請求管理
- 請求書記載
- 資料保存
またトラブル防止のための「協定書」取り交わすことが必要となる可能性もございます。
近年課題とされてきた歯科技工業界の人材不足や処遇改善に対して、国が一定の評価を示した制度であると考えています。
TMPでは、歯科医院・歯科技工所双方が適切に制度運用できるよう、今後も最新情報や疑義解釈、実務対応について継続して情報発信を行ってまいります。
